箱庭療法とは? その1
文責:酒林康雄 [十三カウンセリングルーム]
「とある面接のスケッチⅠ」
クライエント(以下CLと略します)の目の前に57cm×72cm×7cmの内側が青く塗られた箱があります。その中には、6、7分目の砂が入っており、今は平らに均されています。視線を横に向けると、幾つかの棚が目にはいります。棚には、大小様々なミニチュアが並んでいます。ディズニーのお話に出てきそうなお人形から、動物達、家もあります。郵便ポストに時計、樹木や大仏のようなものまであります。CLの少し離れた後ろから、カウンセラー(以下COと略します)が、静かに見守っています・・・・・・・・・。
読者の皆様、こんにちわ(こんばんわ、かも知れませんね)。遅くなってしまいましたが、今回の「ウッキーペディア」は『箱庭療法とは?』です。冒頭に箱庭療法のスタートする感じを描写してみました。上手く書けていると良いのですが・・・・・・・。
まずは箱庭療法の歴史について簡単に説明したいと思っています。
現在、箱庭療法と呼ばれているもののスタートは、子供の為の心理療法として、ローウェンフェルト氏によって創始された世界技法です。その後、ローウェンフェルト氏に世界技法を学んだカルフ氏が、ユング心理学の理論を使って、理解を深め、サンドプレイセラピーとして、発展しました。適用範囲も子供から成人まで広がりました。そして、1965年に、ユング派分析家の資格を取得して帰国した河合隼雄氏によって箱庭療法として日本に紹介されました。箱庭療法は日本人の感覚と合ったのでしょう、急激に広がっていきました。
箱庭療法は、CLとCO、箱、砂、そして様々なミニチュアから成り立っています。CLは、この箱の中に砂やミニチュアを使って、一つの風景(世界でもあります)を作っていきます。その世界には、CLの心が表現されていると言われています。
「箱庭療法」というとCLの作る箱庭の中の世界がクローズアップされがちですが、実は見守るCOの役割は極めて重要です。COがCLの作る箱庭の世界をどれだけ深い意味で理解しているかによって、CLの表現も変わってくるのです。
スケッチの中の箱庭が出来上がったようです。
「とある面接のスケッチⅡ」
CL「できました」とCLは一言話して黙ります。CO「できましたか」、CL「はい」二人とも沈黙の中、箱庭を見つめています。CLもCOも心の中は目まぐるしく動いていますが、しばしの沈黙です。しばらくするとCOが「少し説明してくれますか」と静かに言いました。CL「ええ、・・・・・・・・」とCLは箱庭の説明を、あるいは作っている途中で気になった事や、心に浮かんだことを話し始めます・・・・。COは、相づちを打ったり、気になる所を質問したりしながら、話を聞いています・・・・・・・。
今回は箱庭療法の様子を、少し描写してみました。必ずしも書いたような流れで進むとは限りません。箱庭を置いているうちに涙が出てきたり、急に思い出したことを話したくなったりと、本当の場面は様々です。私がCOとして体験した中での様子を書いてみただけと思って下さい。また、特定の人物を想定したわけでもありません。心理療法の一つのセッション(50分)の流れはCOとCLの個性や関係によって左右されます。それは千差万別で同じものは二つとない世界といえます。
次回は写真を盛り込みながら、箱庭療法の世界をもう少し説明していきたいと思っています。
[参考文献]
東山紘久 (1994)『箱庭療法の世界』 創元社
Kalf, D. M.(1972)『カルフ箱庭療法』(河合隼雄監修・山中康裕・大原貫共訳) 誠信書房
河合隼雄 (1969)『箱庭療法入門』 誠信書房